中華料理レストランから住居へのコンバージョン

前橋PROJECT

群馬県前橋市。
中心市街地にほど近い閑静な住宅街にたたずむ、古びた一軒の中華料理レストラン。

築年数も古く、油汚れもひどい。

そんな廃墟の中に、キラキラした瞳で一人ニコニコしている男が。
そう。リノコンプロジェクト 主宰 田淵憲一 その人である。

「ここはお店としてはしんどいね。住居に変えちゃおう。」

そうつぶやく田淵の一言で、前橋プロジェクトが始動した。

なぜお店ではなく住居に?

会社に戻る車中で田淵にたずねる。
「なぜ、お店ではなく住居に?」
「いくつかあるけど、まず日中ほとんど人通りがない。駐車場もない。」
「はい。」
「仮に店舗兼住居とした場合、店舗部分の収益が支払いの原資になるから、この人通りでは結構厳しいよね。
実績のあるお店が入ったとして全部を店舗としても、駐車場もないのに席を埋めるのは相当難しい。」
「確かに。」
「このお店を閉めた理由は分からないけど、そういう理由で集客が上手くいっていなかったのかもね。」
「そうかもしれませんね。分からないですけど。」
「あとは周りが閑静な住宅街なのに中心市街地も近くて、車のアクセスもいいから、住居なら賃貸も売買もいけそうかなって。」
「そうですね。」
「あと、直感。ビビビッ!と来た。(笑)」
「それなら間違いない!お店じゃなくて住居っすね。(笑)」
田淵の直感が あなどれないことを私は知っている。

「一人来ればいい」
「つくり手も楽しめ!!」

その後の調査・検討の結果、世帯を分けず1棟1世帯でのコンバージョンでやることになった。
ただ、それなりの大きさがあるこの物件、なんの特徴もない住居では1棟貸しも売却も難しそうだ。
何を魅力にし、どう作り込むのか。
コンセプトづくりは想像以上に難しい作業となった。

意見は出るものの、これだというものに なかなかたどり着けなかった。
閉そく感でどんよりした空気が流れる中、今まで黙っていた田淵が口を開く。

「1棟1世帯なんだから万人に受けなくていいんだよ。『これ好き!ここに住みたい!』って思う人、
一人来ればいいんだからさ。」

その一言で場の空気が変わり、コンセプトは一気に出来上がった。
この物件のコンセプトは「大人のアソビバ」となった。
どんな遊び場にしようかと皆で真剣に話をしていると、黙っていた田淵が再度口を開く。

「遊び場を作るのに、なんでみんな難しい顔してんの??作り手も楽しまないと、
本当に楽しい場所にならないよ。」

そこからはワイワイガヤガヤ、ターゲットとなる人物像をつくり上げ、その人物が好きそうなもの、ワクワクするものをその人物になりきって考えていった。

楽しいことを全部やりたいので、
知恵と工夫でコストダウン

1階はスーパーカーを格納するビルトインガレージ、2階に開放感・リゾート感のあるジャグジー、部屋の中にトリックアート、 屋上はバーベキュー広場、リビングダイニングはクラシカルなお屋敷などなど・・・
楽しいことを積み上げていくと、当然ながらコストもどんどん積みあがっていった。
賃貸又は売買を考えた場合、いくら良いものが出来ても、相場観を失っては意味がない。

でも全部やりたいので、知恵と工夫でコストダウンを図る。

ハチヤマテリアルで開発した特殊下地材を塗り込んで強度を高める外壁工法の一部仕上げを、 モルタル造形からオリジナルスタンプマットを製作・活用したスタンプウォール工法に変更。
これにより材工あわせて24%のコストダウンに。
工期も7日かかるところ、3日まで減らすことができた。

2階のジャグジーは高級リゾートをテーマとしており、バスタブにまたいで入るのではなく、 周囲をかさ上げしてバスタブを埋め込み、フラットに入るデザインとしていた。
そのため、かさ上げ部分にブロックを積んだり、コンクリートを流し込んだりする必要があり、 かなりの重量が出るため、それなりの補強工事が必要だった。
しかも、曲線のデザインをブロックで作るのは難しく、その部分は別途大工さんによる造作が必要だった。

ふくれる重さとコストだったが、これらを一気に解決する妙案が生まれた。
それは、ブロックとコンクリートの代わりに発泡スチロールを使うことだ。

発泡スチロールで土台となる部分の型をつくり、セメントにタイル張りで仕上げるオリジナル工法である。
大幅な軽量化とアールのデザインも難なくクリア。
強度も全く問題なしで約50%のコストダウンとなった。

それ以外にも様々なコストダウンを積み上げ、何とか予算の範囲で完成までこぎつけた。

訪れる人も笑顔に

苦労は多かったが楽しいプロジェクトだった。

内覧にいらした多くのお客様にも、この物件でのご自身の楽しみ方を想像しながら楽しんで見ていただけた。 結果的に思いのほか早い時期に賃貸物件としてお客様もつき、現在も引き続きご利用いただいている。(平成30年8月現在)

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