廃墟の精肉工場を自社ビルに

アレンジコンクリート新社屋PROJECT

埼玉県伊奈町。国道沿いにそびえる怪しい廃墟。
壊すことも出来ず長年放置され、今にも何か出てきそうな、訪れる者を拒むような、そんな雰囲気を醸し出している。

このまがまがしい廃墟の中に、キラキラした瞳で一人ニコニコしている男が。

そう。リノコンプロジェクト 主宰 田淵憲一 その人である。

「なんかワクワクしちゃうね。笑」

こんなお化け屋敷みたいな建物を見てこんなことを言う田淵に、正直、顔が引きつる自分がいた。

「ここはやめましょうよ、、屋上にカラスがとまってギャーギャー鳴いたら、100点満点のお化け屋敷ですよぉ・・・」

「まぁ、確かにこれはヤバいね。笑」

「そうですよ!アレンジコンクリートの新社屋には向いてないです!」

「いやいや!何言ってるの!?理想的な物件じゃん!」

「いやいや!さっき『確かにこれはヤバい』って言ってたじゃないですか!」

「見た目はヤバいけど、コンクリート造の廃墟だよ!俺たちの得意なことは何!?」

「セメント技術で補強しながら美しい外観を創り上げることです。」

「正解!ね、理想的でしょ。笑」

「・・・・・・・」

こうしてアレンジコンクリートの本社屋が埼玉県伊奈町に決まった。

派手に!!

後に風のうわさで、この建物は地元で「お化け屋敷」と呼ばれているということが耳に入ってきた。

「だろうね。」

とメンバーは皆思った。そのことを田淵に伝えると、ひるむどころか

「じゃーご近所の皆さんが今とのギャップでびっくりするくらい派手な建物にしちゃおうか!笑」

と言って笑った。

このお化け屋敷がアレンジコンクリートの本社屋になることは すでに決まったこと。
だったら悪い事ばかりに目を向けないで、ご近所さんがびっくりするものをつくることに力を注いだ方が楽しい。

「それじゃーご近所さんがびっくりするくらい派手な建物にしちゃいますか!笑」

そう言って田淵の考えに乗っかることにした。

プラスαの機能を持たせる

どのようにこの物件を再生しようかと話し合いを重ねていくなかで、 せっかくの自社所有の本社社屋なので、ただキレイにするだけではなく、 これからの仕事に活きる思い切ったリノベーション&コンバージョンにしようということになった。

具体的には、元々冷凍庫に備え付けられていた味のある照明器具を活かして、打ち合わせスペースを洞窟風にしつらえ、 想像力をかき立てられる空間で常識にとらわれない話し合いやクリエイティブな創作活動ができるようにした。
また、その打ち合わせスペースには隠し扉をもうけ、そこを開けて現れる部屋は古代の遺跡を模した雰囲気のある社長室とした。
その他にも伸縮性がある薄層モルタル工法「アレンジアスファルト」を使ってアスファルトの駐車スペースにデザインを施したりなど、 さまざまな工法を用いて仕上げることにより、「展示場」としての機能も持たせた。

こうして、ただ単にきれいに仕上げるだけではなく、展示場の機能や創作活動・打ち合わせに資する空間機能などのプラスαの機能を持たせ、 他にはない面白い空間を創ることが出来た。

ねらい通りに

完成まであと一息の工事中や完成後に、道行く人たちにたくさん声を掛けられた。

「あの廃墟がここまで変わるのはすごいね!ところでここは何屋さんになるの??」
「短期間でものすごい変わりようだね!」
「景観が良くなってよかったよ。前はうっそうとしていたからさ。」

どれも好意的なお言葉で、これからこの地でお世話になる我々にとっては何よりの歓迎の言葉であった。

完成披露のレセプションにお招きした招待客からもたくさんのお声をいただいた。

「ぜんぜん壊さないでここまで変わっちゃうんだから、もうリノベーションじゃなくて『トランスフォーム』だよね。笑」
「うちの会議室もこういう感じにリノベーションしたいんだけど、お願いできる?」
「あのお化け屋敷を3ヶ月足らずでここまで劇的に変えてしまう技術、凄いですね!ちょっと自分が持っている物件で見てもらいたいものがあるんだけど。」

やはり、百聞は一見にしかずの言葉通り、実際にご覧いただいた方々からは概ね高評価をいただき、新しい仕事へと繋がっていった。

自ら実践したリノベーション&コンバージョンでその素晴らしさを実感、お化け屋敷は大化けし、ねらい通りにこれからの仕事に活きるものとなった。

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